精神的ダメージがとてつもなく大きい火事現場 だからこそ、当事者の今後の人生を考えた解体工事が必要だと思います

火事現場の解体工事は、『火事に見舞われた』という当事者の精神的負担がとても大きいものです。そのうえ、工事をめぐって近隣住民とのトラブルも起こりやすく、徹底した防塵対策や罹災ゴミ(火災ゴミ)の適切な処分、近隣への特別な配慮など、通常の解体工事よりもさらに慎重に工事を行わなければいけません。

これまで多くの火事現場の解体工事を経験してきた株式会社サポートプランの代表・塩田さんに、通常の解体工事と異なる点や火事現場の解体費用、火事現場の解体で起きやすいトラブルなどについてお話を伺いました。YouTube動画でも詳しく解説しておりますので併せてご覧ください。

近隣住民は怒り心頭⁉︎ 当事者の精神的負担がとにかく大きい火事の解体工事

火事現場の解体では、火元となった土地、つまり火事を起こしてしまった当事者の精神的負担がとにかく大きいことが特徴です。所有している建物で火事が起きた、自分の家が火事に見舞われた、ということだけでも冷静でいられない状態なのに、火事を起こしたことで近隣住民から厳しい言葉を投げかけられるなど精神的に辛く苦しい思いをすることも少なくないそうです。

「火事が起きた場合、どんな理由にせよ近隣住民にしてみれば『火事を起こされた』『貰い火で被害を受けた』『なんてことしてくれたんだ!』と怒りが湧いてしまうものです。日本の法律では近隣の家屋に延焼した場合でも火元の住民が賠償する必要はないので、貰い火で被害を受けた住民にしてみればただただ迷惑を被ったことになるわけです。火事のあと近隣に謝罪をして回る際には厳しい言葉を投げかけられることは避けられないでしょうし、解体工事の前に挨拶へ行けば再びお叱りを受けることも考えられます。“火元は七代祟る”なんていう言葉もあるように、火事を起こしたことで多くの人の恨みを買ってしまい肩身の狭い思いをして暮らしていかなければなりません。なかには、その土地に住み続けることが難しくなり仕方なく別の場所へ引っ越すというケースもあります」

ただでさえ火事によって近隣住民に迷惑をかけているので、解体工事によって再びご迷惑をおかけしてしまうわけにはいきません。火事現場の解体は通常の解体工事よりも丁寧さや慎重さが求められ、近隣への配慮は徹底して行うそうです。

「工事中も近隣住民の方々はその場所でこれまで通り生活をされるわけですから、できるだけご迷惑にならないよう慎重に工事を進めなければいけません。火事現場の解体では、作業員は顔まで真っ黒になってしまうほど真っ黒な煤(すす)が舞い上がるので、煤によって近隣家屋や洗濯物を汚したり生活道路が真っ黒になったりしないよう徹底した防塵(ぼうじん)対策を行います。工事のスケジュールを伝えておく、近隣の方々の在宅時間や洗濯物を干す時間などを把握しておく、工事の際の細かいご要望を伺っておくなど、事前に近隣住民の方々とのコニュニケーションをとっておくことも重要な工程のひとつです」

通常の解体工事よりも高額になる火事の解体
解体業者を決める上で重要なポイントは、火事現場での工事経験の有無

火事現場の解体は、通常の解体よりも費用が高額になります。その大きな理由が、ゴミの処分費用が非常に高額であること。

建物が何もかも燃えてしまった火事現場では、通常の解体のように細かく分別してゴミを廃棄することができません。そのため、いろんなものが混ざったままのゴミ(罹災【りさい】ゴミ)を処分する必要が出てきます。自治体によって罹災ゴミをどの程度引き取ってくれるかも異なるため、処分費用に大きく差が出るのだそうです。

「大きな焼却施設を持つ自治体は引き取り可能なゴミの種類が比較的多いので、ある程度の量の罹災ゴミを一度に処分することができます。しかし、検品が厳しい自治体や焼却施設が小規模で引き取り可能なゴミの種類が少ない自治体などは引き取ってもらえるゴミが限られていて、引き取ってもらえなかったゴミは個別に処分しなくてはなりません。そうなると、個別の処分費用やゴミの運搬費用がかさみます。『1箇所で全部燃やしてくれたらいいのに』と思いますが、なんでもかんでも燃やしてしまうとゴミ焼却施設の焼却窯の劣化・故障につながるのでそういうわけにもいかないのです。仮に約100平米、延べ床面積30坪程度の家屋を解体するとして、ゴミ焼却施設が一括で引き取ってくれた場合は100万円以下で抑えられるかもしれませんが、そうでない場合はゴミの処理費用だけで100万円は超えてくるでしょう」

また、自治体によっては、ゴミの搬入時間に制限がある場合も。確実にゴミを搬入するため、搬入経路の事前確認やトラックの代数の確保、各自治体の搬入時間、ゴミ処理施設との綿密な連携が必要不可欠です。

「解体工事ではゴミがひっきりなしに出るので、どんどんトラックに乗せて運んでいかないと、現場がゴミで埋まってしまい作業が進まなくなります。トラックにゴミがいっぱいになった時点でゴミ焼却施設に搬入できればいいのですが、自治体によって「午前だけ」「午後だけ」「1日2社限定」など搬入時間が決められている場合もあり、決められた搬入時間内にゴミを搬入できなければ工事日程に遅れが生じ、追加でトラックを手配したり工事のスケジュールを組み直したりしなければなりません。スムーズにゴミを搬入するためには、事前にゴミ処理施設と打ち合わせを行っておくことも必要です」

ざっくりとした見積もりや格安の見積もりで工事を請負う業者のなかには、スケジュールがタイトすぎて人件費やトラックの費用がかさんだり、ゴミの量や搬入時間を予測できずゴミの処分費用が予想を上回って依頼者に追加費用を請求する業者や、赤字を埋めるために人件費を削って雑な工事をするような業者もいるそうです。

「ひどい場合は、現場にゴミを埋めたり不法投棄を行なったりする悪徳業者もいます。こうしたトラブルを回避する方法のひとつとして、火事現場の解体経験の有無はひとつの判断基準になると思います」

安すぎる見積もりには注意! 安さ重視で解体業者を選ぶリスク

少しでも費用を抑えようと、金額重視で解体業者を決めてしまう方も多いでしょう。しかし、『火事現場の解体こそ、安すぎる見積もりを出す業者には注意してほしい』と塩田さんはいいます。

「通常の解体工事でも言えることですが、低価格すぎる見積もりや内訳に“解体工事一式”としか書かれていない不透明な見積もりを出す業者、値切れば簡単に値下げするような業者には注意していただきたいですね。解体費用の内訳は、ゴミの処分費用、重機や足場の費用、人件費、経費、会社の利益で、そのうち4割がゴミの処分費用です。ゴミの処分費用、重機代、足場代、経費は絶対に削ることができないので、見積もり額を下げようとすると必然的に人件費を削るしかありません。人件費を削れば工事の人員が減り、事故が増えたりスケジュールが大幅に遅れたり、工事が雑になって近隣への騒音や粉塵(ふんじん)被害が大きくなってしまいます」

解体費用はもちろん安い方がいいですよね。しかし、安さ重視で業者を選んでしまい、雑な工事や近隣住民に迷惑をかけるような工事をされたり事故が起きたりすると、今度は別の問題で頭を悩ませることにもなりかねないのです。

解体工事のタイミングはいつ? 火事のあとの流れと正しい解体工事のタイミング

火事解体

火事が起きたあと建物を長期間放置しておくのは危険です。しかし、近隣に気を使うから、火事のあった建物を置いておくのは迷惑がかかるから、などの理由で早々に解体工事を行うのは注意したいところ。

どのタイミングで解体工事を行うのがベストなのでしょうか。

「火事のあと、まずは消防署から罹災(りさい)証明書を発行してもらいます。罹災証明書は火事により紛失した証書の再交付や税金の減免、火災保険の請求手続きに必要な書類で、罹災証明書がなければ保健会社に保険金を請求できません。その後、保険会社に連絡し、保険会社の鑑定人によって現場が調査されたあと、保険金が下ります。早々に焼けた家屋を解体してしまうと、延焼の度合いや家財の損失具合などを保険会社が正しく調査できず、最悪の場合は保険金が下りないというケースも起こり得るからです」

罹災証明書の発行や保険会社の調査以外にも、水道やガス会社との手続き、電力会社の調査などいろいろな手続きが必要となり、火事のあと解体工事が完了するまでの目安は2〜3ヶ月後だそう。

「罹災証明書や保険会社による調査が行われる前に解体を行うと保険金が下りないということは、解体業者なら当然知っているものと思われがちですが、火事現場の経験が少ない解体業者だとこうした流れを正確に把握していないこともあります。解体工事が進んでしまってからでは取り返しがつきません。こうした意味でも、火事現場の解体経験がある業者かそうでないかは業者選びにおける大きなポイントになるでしょう」

周辺家屋まですべて燃えてしまうと、隣家との境界線がわからず更なるトラブルのもとに。

火元だけでなく周辺家屋まで延焼してしまった場合は、それぞれの土地の所有者がそれぞれに解体工事を依頼するのではなく一社がまとめて工事を請け負うことも多いそうです。

「ブロック塀など隣との明確な仕切りがあればいいのですが、仕切りになるようなものがない場合や、植木など境界線がわりになっていたものが全て燃えて崩れていたら、どこからどこまでがどちらの家の敷地なのかわからなくなります。別々に業者を手配すると隣家との境界部分だけゴミが残されていたり解体工事がきちんとされなかったりといった問題が起こる恐れがあります。別々の業者がそれぞれ工事を行うよりも一つの業者が一括して工事を行うほうがスムーズですし、そのぶん費用も割安になるというメリットはありますね」

周辺家屋をまとめて解体する際、たいていは火元となった建物の住民が主となって解体業者に依頼するそう。しかし、この業者選びによってさらなるトラブルが生じてしまうこともあるようです。

「過去には、『お宅が頼んだ業者のおかげで大変なことになった。ただでさえ火事で迷惑を被ったのに、いい加減にしてくれ!』といわれ近隣と大きなトラブルになったというご相談を受けたこともあります。自分の家だけなら業者選びに失敗したとしてもまだなんとかなりますが、周辺家屋も一緒に解体工事をする場合はいい加減な業者に依頼すれば近隣住民からさらに責められることもあり、精神的ダメージは相当なものになるでしょう。一つの条件で判断するのではなく、総合的な部分で冷静に判断して解体業者を選んでいただきたいですね」

火事の現場は、『火事を起こしてしまった』『大切な家が燃えてしまった』という精神的なダメージが大きいうえ、近隣住民や周りの人からいろんなことを言われて、いったい誰の言葉を信じればいいのかわからず疑心暗鬼になってしまう人も少なくありません。火事現場の解体実績も豊富なサポートプランでは、火事という特殊なケースでもこれまでの経験から的確なアドバイスを行うことができます。

「解体工事は火事の最終的な後始末ですから、当事者の今後の人生を考えた上で適切な工事を行うことが、私たち解体業者の最も重要な仕事だと思いますね」

インタビュー:コマツマヨ
撮影:洞 テツヤ

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